ブログ物件不動産レポート

建築確認申請が無い!?

  • 売倉庫・売工場失敗談
  • 2018-11-30 17:14:11
こんにちは。本日はある製造業のお客様からのご依頼で工場・倉庫物件の役所調査をしました。
対象物件は市街化調整区域にあり、売主様が購入された当時は、ある不動産会社より「今後、市街化区域に編入されますよ!」という話を信じ、自社の工場・倉庫を建築する目的で土地を購入されたそうです。
しかし実際には、市街化区域への編入は未だに行われておらず、なぜか工場・倉庫建物だけが建っている状態です。

購入当時の契約書・重要事項説明書を見ていませんので、売主様に過失があったのかどうか何とも言えませんが、少なくとも市街化区域になり、建築物の建築ができると錯誤し土地を購入しています。すでに購入してから25年以上が経っており、契約の錯誤無効も主張できないと思われます。

それはさておき、既に今建っている物件をどうするのか、賃貸で収益を上げるのか、売却してしまうのか、
もしくは何もできないのか、ということが知りたいとのことで、まずは確認申請が下りているかの確認を
してきました。役所で過去の概要書、建築確認台帳の閲覧をしましたが、残念ながら当該物件はありません。
役所の話では、「概要書は役所側は紛失している場合もある!?が、台帳にない場合は確認申請の受付をしていないと思って間違いないだろう」とのこと。つまりこの建物は、調整区域にあり、確認申請もせず建築された可能性が
濃厚になった訳です。でも「概要書は役所側は紛失している場合もある」と堂々と言われると、調査する側としては不安ですが。。。

では、こういった物件を賃貸に出した場合、どうなるのでしょうか。まず確認申請が下りていませんので、
建築基準法上の用途も不明(というかありません)です。その為、倉庫として貸すのか、工場として貸すのかも
判断できません。また、役所自ら積極的に調査することは稀だそうですが、もし第三者からの通報があった場合
役所の監察係が現地調査や安全確認を行い、最悪の場合、違法建築物として使用禁止の措置が取られます。もし賃貸途中でそのような事態になれば、賃借人からの損害賠償請求は避けられませんし、まず貸すべきではありません。

売却の場合はどうでしょうか。当社のような仲介業者が媒介する場合は、必ず重要事項説明を行いますので、
上記のようなリスクを事前に買主様へ説明する責任があります。しかしこのようなリスクのある物件を買いたいという
買主様が見つかるとは思えません。現状のまま適法にこの建物を売買することも難しいと思われます。

では、確認申請を取り直す方法はどうでしょうか。建築物は原則、建築着工までに申請許可を得ないといけませんので、後から取り直すということはできないのですが、救済措置として「建築基準法12条5項報告」というものがあります。これは一般的には”確認申請は出ているけど、完了検査が下りていない”物件について、建築物が“建築当時の”法的適合性を満たしているか、構造耐力を有しているかということを証明するために使いますが、確認申請自体がない建物にも準用できるようです。しかし既に建っている建物ですので、壁を撤去すれば目視で確認できる躯体部分はともかく、地中にある基礎についてその構造耐力を証明するのは至難の業です。そのため12条5項報告をするよりも、建物を撤去し新たに確認申請を出した上で建築するほうがコストが安くなるケースもあるようで、この方法もお勧めはできないと思います。そもそも論として、調整区域にある工場・倉庫ですので、市街化調整区域の規制緩和(都市計画法34条)のいずれかの要件を満たしていない限りは、この方法も机上の空論でしかありません。

このように、多方面からのアプローチで所有者様にとって最良の方法を検討した訳ですが、近年厳しい目が向けられるコンプライアンス面の要求を満たしながら、当該物件を今のまま使用することは適わないようです。本物件は平成築で決して古いものではありませんが、皆様においてはくれぐれも確認申請、済証をしっかりととってから建築されることを強くおすすめします。

私たちについてABOUT US

あらゆるステージでビジネスを加速する

売倉庫・売工場物件検索サイト 売倉庫ジャパン